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シネマ絵ッセイ

映画の感想、考察、レビューなど 絵や画像を使ってエッセイ風に書いています

映画「コンテイジョン」感想 ウィルスという試練~エゴを捨てた意志の結晶~

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

目次

◆作品紹介

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

2011年制作のアメリカ映画
監督:ソダーバーグ監督
代表作「トラフィック
   「オーシャンズ11
情報:
アメリカ疾病予防管理センター (CDC)
や他の感染症の専門家から
情報や助言を得た本格志向
●医療監修を務めた
イアン・リプキン医師の
感染が報じられる
●第68回ヴェネツィア国際映画祭初上映
週末三日間の興収ランキング1位
評価サイトでも好意的な評価が多く
観客と批評家ともに評判が高い
●新型コロナウィルスの感染拡大で
再注目、再評価される

◆あらすじ

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

【恐怖】は、
ウイルスより早く感染する。
香港出張から
アメリカに帰国したベスは体調を崩し、
2日後に亡くなる。


時を同じくして、
香港で青年が、
ロンドンでモデル、
東京ではビジネスマンが
突然倒れる。


謎のウイルス感染が発生したのだ。


新型ウイルスは、驚異的な速度で
全世界に広がっていった。
米国疾病対策センター(CDC)
は危険を承知で
感染地区にドクターを送り込み、
世界保健機関(WHO)は
ウイルスの起源を突き止めようとする。


だが、
ある過激なジャーナリストが、
政府は事態の真相と
ワクチンを隠しているとブログで主張
人々の恐怖を煽る。


その恐怖は
ウイルスより急速に感染し、
人々はパニックに陥り、
社会は崩壊していく。


国家が、医師が、
そして家族を守る
ごく普通の人々が選んだ決断とは──?
(ワーナー公式サイトより引用)

◆序章 イントロダクション

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

「春だけじゃなく
夏もムダに失うのね
失われた144日は二度と戻らない
時が止まる薬も発明してほしい」


ため息まじりに漏れる
少女の印象的な言葉
今のコロナウィルスの脅威に
怯え暮らす
私達の気持ちと
リンクします


何故こんなことが起きたのか?
何故こんなことになったのか?
ウィルスは何処から来て、
何処へいくのだろう?


この理不尽。
胸いっぱいの不安


でも、もう一度
よくこの災難を
見つめなおしてみてください


ウィルスは
自分のことだけ考えて動けば
その力は
悪魔のように強くなり
他の人を
「慮(おもんぱか)ろう」
という気持ちがあれば
静かに立ち去っていく
ように見えます


ウィルスは人間にとって
試練なのかもしれません


この映画で描かれる
ウィルスの試練を
三つの立場の物語

 
ー家族の物語    
ウィルスという愛の試練

  
ー社会の物語    
ウィルスの魔力を強める狂気


ードクター達の物語 
ウィルスと命懸けで戦う魂のリレー


から語っていこうと思います

※ここから先はネタバレ感想です 
 ご注意下さい

◆一章 家族の物語

(ウィルスという愛の試練)

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

ICU(集中治療室)
から出てきた
医師が口を開きます
「我々としては、
最善を尽くしました
大変残念です」


エムホフ(夫)が
医師に迫ります
「で、妻と話せます?」


医師は念を押します
「エムホフさん、
奥様は死亡しました」


唖然とした顔でエムホフは問う
「でもさっきまで
家にいたんですよ!」


医師はエムホフに向かって
残酷な真実を語ります
「助かる人もいれば、
亡くなる人もいます」


悲劇は突然訪れます
昨日まで永遠に続くと
思われた日常が突然途切れる
当然,
頭の中は混乱しますし
大切な人の死を認めたくない


「何の話だ?妻に何が起きた?」
「一体なにが?」


絶叫。


説明できないものへの
怒りでいっぱいになるエムホフ
追い打ちをかけるように
息子の死の知らせが届きます


感染。


近くにいるだけで
その思いとは裏腹に
死が伝染していく


意気消沈。
落ち込むエムホフに
弟を心配する娘の言葉
「私がそばにいれば…」


何気ない娘の気遣いが
今の私たちには
とても恐ろしい
ことと理解できます


大切な人だから
そばにいて守りたい
抱き締めたい
手を放したくない


全てを
このウィルスは破壊していきます


分断。


このウィルスの恐ろしさは
感染による死でなく
あらゆるものを分断していく
人間社会
家族関係
人と人


全て感染したものは隔離され
それが差別を生み
人の心に不安と恐怖
を煽(あお)ります


さらにウィルスは
心の中まで
分断しようとします


落ち込むエムホフに
ベス(妻)に関して
事情聴取という
残酷な試練


それまでの妻の行動
プライベート
根掘り葉掘り
聞きだされる内に
衝撃の事実を知ります


仕事の出張先で
結婚前に付き合っていた
男と会っていた


ウィルスは
どこまで苦しめるのか?
心の奥まで分断する
つもりなのだろうか?

 
身も心もボロボロの
エムホフに
とどめを刺すかのように
葬式の拒否


友人、親族が集まり
亡くなった人を偲び
哀悼する
この当たり前と思われた
葬儀ができない


さらに
妻と子の遺体の埋葬を断られる


火葬を進められ
娘と孫とともに埋葬されたいと
妻の母の悲痛な願いは
かなえられません


家族が分断され
心も分断され
亡骸も分断され


全てから魂が隔離される


憔悴の極みにいる
エムホフに
妻の母が優しく語り掛けます
「娘はあやまちをおかしたわ
でも、あなたのことを
とても愛していたのよ」


エムホフは
その愛が本当であったのか
ウィルスによって
もたられた分断によって
試されているのかもしれません


愛の試練
これは娘にも引き継がれます


「花束だけでも…」
妻の死で
落ち込む娘を気遣って
ボーイフレンドが
姿を現します


窓越しの会話で
思いだけを受け取り
会うことはできません


「危険は冒せない」


しかし
好きな人だから
会いたい


安直な思いは
独り歩きする


ボーフレンドは娘を連れだし
2人だけで会います


「お互い元気なら、
 うつりようがない」


ウィルスがしかける
毒より
危険な罠


「自分が大丈夫なら
相手も大丈夫」


この傲慢な思い込み


「本当に大事な人のこと思う」
とは何か?
それは今一度
ウィルスの試練で
問われているような気がします 

◆二章 社会の物語

(ウィルスの魔力を強める狂気)

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

ウィルスが人間社会の中に
広がっていくのと同時に
情報を隠そうとする政府
情報を暴こうとする記者
真実を知りたい大衆
三つどもえの
情報合戦が激化していきます


「嘘はご免だ」
メッセージボードを手に
騒ぎ立てる大衆


政府の繰り返す
マスク
手を洗え
家にいろ
に疲れ切った大衆が
隠蔽を疑いはじめます


死者の数を公表しないのは
数式に乗っとって
計算すると倍々になる
真実を隠している


2人の感染が
が次の日4人に
次は16人に 
これなら管理できる


しかし次は256人に
そして65000人に
もう手が付けられない


30段階後は数十億人
その数字にむかっている
だから死者の数を言いたくない


WHOは製薬会社
とデキている
ワクチンで利益をあげるために
手を結んでいる
我々から金をむしる手
市民は見殺しだ


どの情報を出して
どの情報を出さないか
不安をあおらず
正しく知ってもらう
しかし
投下される情報は
市民の不信を強めるだけ


大衆の反応は? 
予測は困難
ジョーズを恐れ、
海は避けても
平気でタバコを吸う…


病気の原因、
治療法はいつ分かる?
安心材料が必要


一方的な情報に不信感を持つ
市民達に
ネットという強力な
インフルエンサー
がその力を強めていきます


自分の特ダネを強くアピールする
自称記者のブロガー
アラン
彼は声高に語ります


「紙メディアは瀕死だ」
YouTubeで世界に広める」


一般のメディアより早く
僕が書きまくる
自分のブログには
真実を求める訪問者
が200万以上もいる


自作自演の実況中継で
アランは
嘘の特効薬を
真実のドラマに
でっちあげます


「自分は信用のある人間
大衆に向かって
意見を言うことが出来る
それが僕だ
ワクチンじゃなく
レンギョウといえば
皆それを信じる」


荒れ果てた無人の街で
使命感をもった伝道師
とばかりに
嘘をばらまく


アランの流した
虚構新聞
世界中で愛読され
レンギョウを求めて
大衆が店に押し掛ける


われ先に求め、
買い占め、暴動、
しまいには無人の店から強盗


影響力は
悪魔の顔つきを
見せ始めます


もはや
追い詰められた大衆は
嘘を信じている
のではありません
嘘にすがりついているのです


政府に向かって
「真実を語れ!」
画面から呼び掛けるアラン
その言葉が虚しく響きます


そのアランの
強くなる影響力に
詐欺師達が群がってきます


製薬会社の株は天上知らず、
次に狙えるのは何だ?


利益をむさぼる
ウォール街の株屋さん達


幾らで水晶玉を見てくれる?
予言してほしい
分析はは我々がやる


免疫の話で儲けているのは
俺だけじゃない
製薬会社も大儲けだ


一人が死ねば、
別の一人が棺で儲ける
誰であれ金には免疫がない


ウィルスは
人の魔性を目覚めさせ
その力を強めていきます
破壊的なまでに


そして
アランの嘘の魔力は
さらに飛び火します


米国とフランスは
治療薬を極秘製造している
WHOと米国はデキている
米国とフランス
が治療薬を独占だ


このネットに流された
嘘を信じた
中国人医療スタッフが
故郷の村の母、
生き残った人々を救うため
車でWHOの
派遣ドクターを誘拐する
裏切り行為に出ます


彼が悲壮な眼差しで
強く語る


我々はワクチンの列の最後尾だ
誘拐は
列の先頭に立つ切り札


この言葉には
貧しい者の叫び
格差社会の片鱗が
かいま見えます


アランの影響力は
人々に悪魔的な力を
呼び起こしてしまいます


メディアは狼少年じゃない


人々が恐怖に踊らされ
狂気を加速させていく原因は
テレビやネットの噂
を信じること


アランの言葉は
ウィルスより危険だ

◆三章 ドクターの物語

(ウィルスと命懸けで戦う魂のリレー)

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

体温計をくわえ
ひどく咳き込む
ミアーズ感染庁調査官
NO!NO!NO!
部屋に響く悲痛の声
が緊張を高める
熱が上がり悪寒が走る
チーヴァー博士に連絡


発病の報告


調査という単純な仕事
しかしウィルスの調査は
命懸けです


触れるもの


空気
全て感染する危険と背中合わせ


それでも多くの人を
救いたいという気持ち
が彼女を突き動かす


きっと誰かに
うつしてしまった
後任を考えなくては


博士は言う
今は自分の心配をしろ


自身の苦しみ
より
全体のこと


この高い志が無残に
打ち砕かれる事態が発生します


医療崩壊


医療施設の混乱、
疲弊した
看護師達のストライキ
追いつかない支援


病院への
搬送の遅れが
ミアーズの命の灯火
意志の炎
を一気に消し去ってゆく


絶える息


遺体袋に包まれ
地面に埋め込まれる
名もわからない
他の患者とともに

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

彼女の意志
彼女の努力も
葬られるのだろうか?


魂は受け継がれる


CDCの医師アリーが
心血を注いだ努力の末
有望なワクチンを見出す


そして自らの体に
ワクチンを注射して
効果を証明する
大胆な行動に出る


命懸けの魂のバトンを
アリーはしっかり引き継ぐ


決意の足取りの向かう先には
感染患者の隔離施設


ベッドに横たわる
患者に近づき
マスクを外す


「平気よパパ」


せき込む患者は
アリーの父


「いや、ダメだ」と答える父


アリーは真っ直ぐな
眼差しで語ります


「バリーマーシャル博士の話
胃潰瘍はストレスでなく、
ピロリ菌が原因と考え
菌を自ら飲み、自然に治癒
パパが教えてくれた
だから
私もワクチンを試している」


父はアリーを諭(さと)します
「意味が違う 
 危険を冒すなアリー」


晴れやかな顔で
アリーは答えます
「パパは病院に残り
患者の治療を続けたから
発病したのよ
パパこそ危険を冒した
毎日危険を冒していた」


笑みを浮かべる父
「彼は マーシャルは
 ノーベル賞だぞ…私は…」


父の額にキスをするアリー


魂のリレーは
医師達の意志の力で
バトンタッチを繰り返し
親子の絆でしっかり
結ばれます

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

その固い絆は
ウィルスのもたらす
「分断」を食い止めます

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

◆終章 ウィルスの正体

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

映画の最後に
感染発生の
最初の日の出来事
感染源が描かれます


最初の感染者ベスの勤めている
アルダーソン社のブルドーザーが
なぎ倒した木から
バナナの実を
コウモリがくわえ
豚小屋に
バナナの実を落とす


そのバナナを豚がむさぼり
豚は屠殺(とさつ)され
コックが調理する


豚の血のついた手を
洗わないまま
エプロンで拭きとり
コックがベスと握手をする
ウィルスはベスに感染する


これはエゴの因果を
表しているように見えます


環境破壊という
人類のエゴが
香港のカジノのディナー
という欲望のエゴ
を伝い
不倫をしてしまったベス
という愛のエゴ
でウィルスという
魔性に結晶する

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映画『コンテイジョン』Warner Bros

ウィルスを生んだのは
実は人間自身のエゴで
それに悪魔の力を与え
広めるのも
人間のエゴだと思います


だからこのウィルスに勝つのは
ドクター達のような
エゴを捨てた、
自己犠牲の強い意志による
魂のリレー


全ての人々のエゴを捨てた
意志の結晶が
ウィルスの魔性を
封じることができるのだと
思います

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映画『コンテイジョン』Warner Bros